定年が近くなり、自分の最後のキャリアについてよく考えるようになった。
このまま働き続けるという選択肢もあるけれど、今の会社にずっといるのではなく、これまで培ってきた経験やノウハウを活かして思い切って独立開業をしたいという考えもある。
最近では新聞やインターネットなどで定年後も働き続けるという選択肢を見かけるようになったが、どうせ長く働くのなら自分の好きなことを仕事にしていきたい。
でも、自分で独立開業をするといっても、やったこともないし一体どれくらいのお金を稼げばいいのかもわからないので不安だ・・・
この記事を見ているあなたは、このように考えていませんか?
この悩みは、非常によくわかります。なぜなら、私も数年前まで同じような悩みを抱えていたからです。
しかし、あることを行うことでその悩みを解消し、自分の好きなことを仕事にして独立開業をすることができました。
そのあることとは何かというと、『独立開業のためのライフプラン』を作成したことです。
『独立開業のためのライフプラン』とは何かというと、今のお金、資産の状況を明らかにし、将来あなたはどうなっていたいのかを考え、そこから逆算して将来必要になるお金や、必要な収入を明確にするお金のシミュレーションのようなものです。
『独立開業のためのライフプラン』を作ることで、将来必要なお金の見通しと独立開業後に必要な売り上げがわかります。
この売り上げ規模がわかると、あなたがやりたいことでこの売り上げ規模を実現する方法を具体的に考えることができます。
具体的な方法を考えることができれば、独立開業を現実的な選択肢として捉えることが可能になってくるでしょう。
この記事では、この『独立開業のためのライフプラン』を自分で作成する方法を解説します。
目次
今のお金(資産)の状況を知る
まずはじめに、あなたの独立開業の計画をスタートするために、出発点をはっきりさせます。
それには、ご家族も含めた様々なお金に関わる情報(貯金、生命保険、運用資産、年金、老後の生活資金など)を整理します。
特に、現在のすべての資産の棚卸しをしておくことが必要です。
① あなたの資金はいくらなのか
② その資産から独立開業に使えるお金はいくらなのか
③ 残したお金でどんな暮らしが出来そうか
など視点を高くしてはっきりさせておきます。
今の生活水準を維持して整理整頓する
次に今の生活水準をわかりやすく比較するために数字で表現してみます。
あなたは、家計簿を付けていますか?
もし付けていないようでしたら、家計簿アプリなどを使って日々のお金の収支を記録してみましょう。
最低3ヶ月間の記録をしてみます。
そして、その結果を見て今の生活を振り返ってみましょう。
できれば無駄をなくして、経済的な生活ができるか考えていきましょう。
その検討のために、あなたのお金の使い道を、毎月必ず支出する「固定費」とその時々で支出する「変動費」に仕分けをします。
あなたが今、心地よく生活しているのは「固定費」か「変動費」のどちらで実現しているのかを考えてみます。
多くの人は「変動費」に区分される遊興費や衣服代や外食費や趣味のための出費などが目に付き、「うわ、こんなのは無駄だから削減しよう!」という感じで、すぐに「変動費」の削減に取り組んでしまいます。
確かに、このような取り組みにより、短期的には生活費が下げられることもあります。しかし、あなたが一番楽しみにしていることに支払っているお金を問答無用で削減されてしまったらどうでしょうか?
長い間、その我慢ができますか?なかなかこのような我慢が継続できないのは、安易な判断で削減に取り組んでしまうからです。
ここでは、各項目について適正な内容と費用に整理整頓します。
そこでまずは「無駄」をあぶり出してみます。
① 十分な検討をしないまま、毎月支払っているサブスクリプションはありませんか
② 自分へのご褒美と言ってコンビニでお菓子やケーキ、レジ近くの商品の試し買いをしていませんか
③ なにげなくネットショッピングを繰り返していませんか
④ 当たり前のように毎年の流行を追って購入している趣味のモノはありませんか
⑤ 同じ性能、機能を得られる携帯電話のキャリアへの見直しをやっていますか
など今の生活水準は変えなくても無駄の削減効果の高い内容が見つかるのではないでしょうか。
私の経験では、使途不明金として、3万円から多い人で7万円も見つかっています。
このように整理した結果、今までの生活を経済的に整頓することが出来ました。
これにより「本当の今の生活水準」を明らかにすることができました。
つぎにこれからの生活水準を決める
つぎにこれから死ぬまでの生活水準を決めていきます。
今の生活を整理整頓した新しい生活水準を基準において、これから先の生活水準をどの程度に設定していくかを考えていきます。
あなたは、今の生活水準を何歳まで維持したいですか?
① 定年退職後の生活水準も今のまま維持しますか
② その生活水準を健康寿命(老化や病気などで不自由な状態にならずに生活できる期間)まで続けますか
③ 健康寿命が過ぎてから死ぬまでの生活水準はどの程度にしますか
このように、これから先、死ぬまでの生活水準を見通してみてください。
あなたの適正な生活水準を維持するために必要なお金はいくらになりましたか?
収入はいくら必要か目標を決める
総務省統計局の「家計調査年報2020年」のデータによると、二人以上の60~69歳の世帯の消費支出は、282,997円です。
概算として、28.5万円だとすると、年間で342万円、多めに見て約350万円が必要な生活費と考えることができます。
同じ世帯の「実収入」は466,747円/月(年間560万円)です。使えるお金は、392,626円になっています。
例えば、今あなたが50歳で、70歳まで働いて、そのあと90歳まで生きると決めたとします。
引退までの年数は、20年、引退後死ぬまでの年数は20年です。
引退後、死ぬまでの生活水準を決めたら、これからの20年で、引退後死ぬまでの20年の生活費を貯めればよいことになります。
例えば引退後の生活費を、月30万円、年間360万円と決めたとします。
もらえる年金額を年間200万円とすると、1年間の不足分は、360万円―200万円=160万円になります。
引退後20年分(160万円x20年)の3200万円を、引退時までに貯めなければならないということがわかります。
このように「引退するまでの年数」と「引退後の年数」のバランスが目標設定には重要であることがわかります。
つまり、長く働き、引退後の年数を減らすことと、引退後の生活水準を低く抑えることを前提として考えていくことにより独立開業のお金の計画の目処付けができるというわけです。
具体的に独立開業後の生活水準をイメージすることが難しければ、今の生活水準に対して、だいたい10%削減するとか、20%質素にするとか、逆に自由時間が増やせるから趣味を充実させて15%アップするとか仮置きして進めましょう。
これで、引退までに貯めるべき必要な金額がわかりました。
その収入から逆算して売り上げ目標を決める
今50歳、引退するのは70歳、死ぬのは90歳として、引退までの20年で貯めるべき金額は、3200万円(年160万円)でした。
そのときに、毎年160万円を貯蓄しながらどのように生活していくかを考えます。
この生活の基盤のための収入は、独立開業により経営を始めた会社からもらう「役員報酬」です。
役員報酬は、期のはじめに、自分が経営者としてもらう年間の給与額を、株主としての自分が決めておく必要があります。
決め方の一例としては「粗利の合計に対して、4:役員給与、4:経費、2:利益 に分配する」があります。
役員報酬は、自由に決められるので、ルールはありません。
会社に利益を厚くして残していくかどうかは、独立開業した事業の後継者の有無で判断していくとよいと思います。
また、稼いだ粗利から売り上げを上げるために必要な原価を差し引いた金額に対して分配を決める方法もあります。
会社の粗利が先に決まっている場合は、「4:4:2」の割合を使って、計画的に役員報酬を決めることが出来ますが、事業が軌道に乗るまでは、ライフプランから逆算して役員給与を決め、粗利・売上の目標を達成できるように決めていくことになるでしょう。
1年間で220万円を貯める前提で役員報酬を決める方法は、概算で約3倍と考えることができます。
以下のような項目に「1:税金や社会保険料、1:生活費、1:将来のための資金」の割り振りで考えます。が、定年退職をきっかけに独立開業する場合は、会社を大きく成長させる必要はあまり考えないとすれば「将来のための資金」は対象外にすることができます。
すなわち、今回のケースだと160万円x2=320万円を役員給与としてもらえるように計画するとよいということです。
このように、計算してくると、320万円の収入が得られるような利益を目標とすることが出来ました。
ライフプランからみた独立起業に必要な事業計画のポイント
このように独立開業の経営に関する目標数字は「将来のライフプラン」から決めることができました。
経営数字を決めるために、まずやらなくてはいけないこと。それは、今後のライフプランを立てることです。
① 今のお金(資産)の状況を知る
② 仕事を辞める年齢、死ぬ年齢を決める
③ 引退まで、引退後の生活水準を決め、収入はいくら必要か目標を決める
④ その収入から逆算して売り上げ目標を決める
⑤ 独立開業の経営数値目標を決める
このようなステップを進んで、将来の資金のために年間いくら貯める必要があるのかということを計算し、そこから役員給与を求め、各経営目標数値を設定することにより、あなたにピッタリな事業計画にできます。
意外と簡単な計算だということがご理解いただけでしょうか。
ライフプランが決まると自分の生き方を仕事や経営に反映できる
独立開業を考えていくと、将来どうなっていたいかを考えることになります。
それは、あなたの「生き方」や「人生」について深く考えていくことです。
あなたの独立開業の場合は、自分自身を経営に反映することが出来ます。
経営計画の売上などの数字目標は、比較的簡単に計算して求めることが出来ました。
一方で「生き方」を反映することを考える場合、一番肝になるのは「優先順位を決める判断基準」です。
どのようなシーンでどんな判断をするのかの基準を決めることです。
選択を迫られる度に、どう判断して、何を選ぶのかを決めるという意味です。つまり「あなたの人生の優先順位は何ですか?」という問いに答え続けることです。
例えば
・仕事をずっと続ける
・とにかくお金をたくさん稼ぐ
・健康を優先する
・趣味を優先する
などです。
その優先順位から、それを実現するための「お金」をシミュレーションしていくことができます。
スタートは、あなたがこれから死ぬまでにどの様な人生を送っていきたいのかを決めるのです。
ここを決めることからはじめると、将来のお金の計画がより具体的になります。
これからの時代は、好きなこと、得意なことを仕事に選ぶことが、仕事を長く続けるためのキーだと思っています。
独立開業であれば、その生き方に沿った仕事や働き方、稼ぎ方を自由に計画することができます。
独立開業の準備をしよう
1年後に開業することを目標地点として置いたとします。開業は、徒競走のように停止状態からスタートダッシュする決まりはありません。
1年後の地点で整えておきたい内容を今からどの様に準備していくかを考えます。
1. 何をやるか
あなたが選んだものを定めましょう。本当はなんでもいいと思いますが、やはり好きなことから決めることが重要です。
好きなことや没頭できること、飽きずに継続できることを書き出します。その中からどう考えても商売にならないものは除外します。
ネットでそれに関するワードを検索窓に打ち込んでみると「商売」のスタイルは調べられます。
自分であればその商品やサービスを年間どのくらい利用するか、また購入する人数はどのくらいいるか見積もることが出来るでしょう。
その売上が、あなたの経営計画の数字を超えることができそうかで判断して絞り込んでいきます。
残念ながら越えそうになかったら別のテーマを選択するか、売り上げを上げる他の方法がないかもう少し深く検索して情報収集してみます。
2. 資金
開業資金ゼロでのスタートは無謀です。
開業を1年後と決めたら、貸借対照表(バランスシートB/L)を作って、今の資産の見える化を行い、現有資産を明確にします。
その資産のうちどのくらいを開業用に転用出来るかを考えます。
バランスシートは「資産」「負債」の要素であらわされているので、財務状況が簡単にわかります。
いくらの資産が開業資金として利用できるのかを検討した上で、不足するお金は、これからの1年間で開業に備え貯金をする行動を起こすことにします。
いわゆる無駄使いの徹底的排除、使途不明金の洗い出しを行い、お金を貯めていくことです。
独立開業のはじめ方のまとめ
ここまで読み進めていただいたあなたは、なんとなく、将来独立して自分のやりたいことで開業してみたいなと考えていた時点から、すでに頭の中に事業計画が浮かんできているのではないでしょうか?
あなたのライフプランから、必要となる収入が計算でき、独立開業の計画の作り方がわかったと思います。
・現在の家計の状況がわかった
・現在の資産の状況がはっきりした
・独立開業した際の必要な収入を計算できた
・その収入を得るために必要な売り上げと利益を想定できた
あなたの疑問に対する答えをすべて見つけられたのではないでしょうか?
あなた史上、一番若い今、行動を起こしてみましょう。
きっとあなたにピッタリな独立開業の計画が作り上げられるでしょう。
さらに、もう少し精度を上げたお金の流れを知りたいあなたには、キャッシュフロー計算書のシミュレーションソフトをご紹介します。
このシミュレーションを行うことにより、これから30年程度の暮らし方、働き方についての意識がしっかりと目覚めてきます。
「これから暮らしていくために必要なお金は、いったいいくらなのか」の全体像を明確にすることができます。
特定の企業に属さず「必要としている人に必要なモノをお届けしたい」を第一にチーム体制を活用して多面的にアドバイスを行います。初めての人にも平易な言葉で分かりやすい説明をするスタイルに定評がある。