ステップ1を経験されたお客様のケース①

あるクライアントさんの事例を振り返ってみましょう。
相談に来られたきっかけは、組織変更があり旧来のメンバーとの直接の交流が激減してしまい、会社での自分の価値について急に不安になったことでした。50歳を越え、定年が見えてきた管理職の方です。

一通り、現在のお悩みを伺いました。そこで、少し視点を高くして考えて遠くをみることをお勧めしました。この先20年、30年を見通したとき、あなたはどうなっていたいのか?という視点になって考えていきました。

すると、少し表情が優しくなり、思いつくままいろいろなやりたいことや、夢が言葉になって出てくるようになりました。いくつかの話題が出たところで、この中で一番やりたいこと、テーマはなにかとお聞きしました。

本当に一番やりたいことは
「人里離れた山村に住み、自然に囲まれて静かに暮らしていたい。」
ということでした。

一方で、どうやらそこにあるジレンマにも気が付いているようでした。

「そんな生活をしたいのだけれど、家族が基本的な生活をするには、ある程度の収入が必要だとも思っている。」と。

そこには実は「働かない」と「働く」という行動の対立、ジレンマが現れていました。
しかしそれぞれの行動には「共通の目標」がありました。
それは「ずっと楽しく暮らす」ことです。

まず、「働かない」ことによって、共通目標の「ずっと楽しく暮らす」ための「毎日楽しく過ごす」という要望を満たしたいということだとわかりました。

一方で「働く」ことによって、共通目標の「ずっと楽しく暮らす」ための「生活を維持する」という欲望を満たしたいということだとわかりました。

このジレンマを書き出し、つながりを双方向で確認してみて違和感がなければまずはジレンマの整理が出来たことになります。

ここから「対立している構造を解決する方法」を考えていきました。

視点1:「働かない」と「生活を維持する」ことに妥協してしまうと感じているのでしょう。「自分で働かないと生活を維持することができないから」という思いが強いのかも知れません。ならば自分で働かなくても生活を維持できる収入を得る方法を考えればいいのです。新しい発想が出てくるまで考えてみましょう。

視点2:「働く」と「毎日楽しく過ごす」ことに妥協してしまうと感じているのでしょう。「働くと楽しく過ごせないから」という考えがあるのかもしれません。しかし、もし楽しく働く方法があったらどうでしょうか。いろいろアイデアはでてくるのではないでしょうか?

視点3:「働く」と「働かない」は本当に両立できないと思い込んではいないだろうか。少し働いて生活を維持できる方法があるかもしれないですね。

視点4:「毎日楽しく過ごす」と「生活を維持する」に注目すると本当に「働かない」と「働く」の二者択一のアイデアしか無いのだろうか。この二つの選択肢から離れて両方を満たす妙案はないかと考えてみました。

このように、4つの視点で、それぞれの異なる角度から発想を変えて、対立している構図の中に潜んでいる「思い込み」を見つけていきました。思い込みのせいで対立が発生しているようであれば、思い込みを解消することで、対立を解消する新しい解決策が見つかることになります。それぞれの思いを大切にしつつ、対立している状況からの解決の突破口を見つけ出す発想法を使ったわけです。

様々なアイデアを出し、検討を進めていきました。「働く」という見方についてアイデアが出てきました。好きなことをやって収入が得られるのであれば生活を維持することが叶うかもしれないと。今の仕事の範疇でしか発想していなかったので、違う職場や、違う会社に雇われたら今と変わらないし、お金のために転職先を探すことも違うなという気づきが生まれてきました。

そんな会話をしていた時、「実は猟銃に興味があってね」というキーワードが出てきたのです。もしかしたら猟をすることでお金が稼げるかもしれないと気づき、調べることになりました。その結果、現在このクライアントさんは、山村に住居を構え、猟銃の所有ライセンスを取り、地元の猟友会の方々と鹿の駆除をされています。

収入については、ご相談を頂いたときにキャッシュフロー計算書を作成して精査した結果、毎月20万円あればよい。と確認が出来ていたので、その相談の時から始めた資産運用と資産形成、定年退職金の運用を上手く使い、65歳からの年金受給を視野に入れた将来の資金計画をもとに、現在は時々アルバイトをして暮らしているそうです。

このクライアントさんから「お金については心配がなくなり、安心を得て、ずっと楽しく暮らすという目標が達成できそうです。」というコメントを伺い、本当に一緒に取り組ませていただけて良かったと嬉しく思っています。